何に熱中したらいいかわからない。そんな戸惑いを持つ中学生に「歌」という居場所をつくり続けた。
「熱い気持ちは、必ず子どもたちに伝わるから」
それが口癖で、教員生活の多くを合唱の楽しさを伝えることに捧げた先生。そんな先生を送るには、歌がいい。教え子たちが世代を超えて集い、旅立った先生の音楽葬を開いて大好きだった曲を歌うことを決めた。
思えば「先生の言う通り」
汗が飛び散るほどに、台の上でぶんぶんと指揮棒を振る。その姿が、まるでみつばちみたい。
生徒たちはこう呼んだ。
「みつばちまっつー」
大阪の寝屋川市立第六中学校から音楽教諭の道を歩み始めた松村修さん。大阪音楽大学の声楽科を卒業して1976年に同校に赴任し、2年目から本格的にコーラス部の顧問になった。
卒業生の後藤由美子さん(58)は入学後、吹奏楽部に入った。けれど、ピアノが得意だった後藤さんを「入らなかったら後悔する」と言って勧誘した松村さん。後藤さんは熱意に折れ、コーラス部に入った。
多いときには90人の部員がいたが、松村さんは「一人一人の声を聴く」と、1人ずつ指導していた。後藤さんは「先生の熱い思いが伝わって、みんなの思いが一つになって歌にのっていく。中学3年間の合唱が、一番楽しかった」と笑う。
結局、先生の言う通り。コーラス部に入らなかったら後悔していたと思う。
後藤さんはいま、ピアニストとしての仕事を続けている。
歌を力に、生きていくんだ
松村さんの3校目の転任先となった豊中市立第七中学校では、合唱に取り組む生徒は少なかった。自ら部員を集め、少ない人数でもコンクールに挑戦した。
同校で教え子だった末岡伸男…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル